かぼすのまにまに雑録

日常生活、留学生活、一人旅など良いこと悪いこと含め心動いた瞬間を綴っていきます。

日常

私たちの周りは非日常であふれていた。

大きくなればなるほど世界は広がる。
価値観が増える。違う文化に触れられる。
それと同時に、かつては非日常だったものが日常へと変わる。

それが良いことだとも、悪いことだとも思わない。
ただ、私は少しの切なさを感じる。

幼かった頃は家でさえ大きな冒険の舞台だった。
やっと一人で立てるようになったあの頃は、自分ではいけなかった部屋に行くだけでも心が踊った。
階段は途方も無い崖のようだった。
初めて階段を登り終えたときの自分は、大きな試練を乗り越えた英雄だった。

自分の部屋は神秘的だった。
ほとんど誰も使ってない部屋。本置き場としてしか用途を果たしてなかった当時の自分の部屋は、本棚とベッドしかなかった。
だからこそ、人気のない静寂な部屋は神聖な空間に感じた。

祖父の家は冒険どころではない。
別の世界のようなものだった。
祖父の家まで運んでくれる電車は銀河鉄道。宇宙という途方も無い空間を抜けて、べつの星へと旅する。

小さな時は非日常に、未知に、冒険に囲まれていた。
だけど、今、あの頃眩しく見えていた光景は当たり前になっていた。
いつも登る階段。
物で溢れた自分の部屋。
電車にのるとスマホをいじる私。
なぜ、同じものなのにこんなにも違うのだろう?

日常は広がる。ドキドキとワクワクでいっぱいだったものもいずれは当たり前になる。
小さい頃は行けなかった大きな世界が自分の足でいける。
自分で世界をこれからも広げていく。
家を、町を、県を、国まで越えて。


今の日常は昔のように未知で溢れていないけど、それでもあの頃の気持ちは忘れないままで。

今日も私は日常を広げる。